「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」
スウェーデンの作家でこのシリーズの出版直前に亡くなったスティーグ・ラーソンの世界的なベストセラーの映画化。原作の一番の魅力はドラゴン・タトゥーの女ことリスベット・サランデルのキャラクターにある。「ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女」 ≪ Reading Diary, Maybeに書いた通りだ。予告編でも思ったことだが、リスベットを演じるノオミ・ラパスはどうも原作とはイメージが違う。似せようとしているのは分かるが、原作ほど魅力的に感じることはできなかった。僕にとってはそれが致命傷で、原作をうまくまとめてあり、スウェーデン映画だけに原作の雰囲気がうまく伝わってくるにもかかわらず、それだけの映画という評価になってしまう。IMDBでは7.6の高得点なので、原作を読んでいない人にはそれなりに面白い映画なのではないかと思う。しかし、それは原作が圧倒的に面白いからであり、映画として優れた技術や演技があるからではないだろう。
それでも本編が終わった後にある第2部「火と戯れる女」の予告編を見ると、これも見たくなる。リスベット中心の話になり、あの金髪の巨人が出てきて、第1部よりも面白いこの第2部をどう映画化しているのか非常に気になるのだ。元々はテレビ用に作られ、第1作がヒットしたことで劇場公開されることになったそうなのだが、公開されれば、がっかりすることが分かっていても、また見に行くことになるだろう。
原作は孤立した島での行方不明事件がメインの話だ。これがやがて殺人事件であることが分かり、さらにそれがサイコスリラーの様相を呈してくる。これに雑誌ミレニアムの記者である主人公ミカエル・ブルムクヴィストの名誉毀損裁判とその人間関係、リスベットの謎の出自が描かれていく。映画がメインに描いているのは孤島での事件。これは上映時間に限りがある以上、仕方がないだろう。ただし、他の要素は第2部、第3部につながっていく部分なので、これをいい加減に扱うわけにもいかず、さらりと触れている。
主人公のミカエル・ブルムクヴィスト(演じるのは名前が似ているミカエル・ニクヴィスト)は大物実業家ヴェンネルストレムの武器密売を批判する記事を書くが、名誉毀損で敗訴する。相手の罠にはめられた結果だった。雑誌ミレニアムを一時離れたミカエルに大企業の元会長ヘンリック・ヴァンゲルが調査を依頼する。ヘンリックの弟、ゴットフリードの娘ハリエットの失踪事件を調査してほしいというのだ。ハリエットは1966年9月に島から忽然と消えた。その時、島には親族30数人が集まっており、そのうちの誰かに殺されたらしい。ミカエルに調査を依頼する前に、ミカエルの身辺を調べたのが警備会社ミルトン・セキュリティーの社員で天才的なハッカーであるリスベット・サランデル(ノオミ・ラパス)。リスベットはミカエルの調査にも協力し、事件の真相を暴いていく。
映画では詳しく描かれないが、ミカエルはスウェーデンの小説「名探偵カッレくん」、リスベットは「長くつ下のピッピ」がモデルとなっている。ミカエルを取り巻く女性との大人の関係がスウェーデンらしいところもこの小説の魅力。それがまったく映画にないのは少し残念だ。枝葉末節の部分を取り払って事件だけをメインに扱うと、こういうことになるのだろう。監督はニールス・アルデン・オプレヴ。日本で作品が公開されるのは初めてらしい。この原作、ハリウッドがリメイクを計画しているそうだ。どんな映画になるのか、こちらも楽しみ。
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